図書館情報大学
事務局長 森 茜
大学改革の流れは、平成3年の大学審議会の動きが最初でした。この大学審議会の特徴は、ふたつあります。ひとつは、大学の柔軟化という点。もうひとつは、大学の自主自立という点。このふたつを核にして、大学設置基準、学校教育法などの関連法規が改正されました。学部構成などの裁量権を大きくする替りに、自己点検・評価を課すなどの改正でした。
その次の大きな改正の流れが、平成10年の大学審議会の答申です。この答申を受けて、今度は学校教育法、国立学校設置法、国立学校設置法施行令などが改正されました。例えば、学部長の法律上の規定が明確でなかったのを、「学部長は学部に関する校務をつかさどる」と明文化したことなどです。事実の追認に見えますが、学部長の権限を明確にしたことはたいへん大きな変化です。
次に大学院の改革です。従来は学部立ち上がりの大学院でしたが、数年前から独立研究科というのができるようになりました。大学院の重点化です。高度な研究と高度な専門職業人の養成へのシフトと、教育と研究の明確化です。一方では、これまでの教官評価は研究活動が中心でしたが、教育活動も評価をしようという動きが出ています。民間人の流動化と関連することですが、教官の人事選考に関する履歴の記入欄には、これまで研究活動の欄しかなかったのですが、教育活動の欄ができて、職務上の業績も記入できるようになりました。教官の教育活動への評価も生まれています。
もうひとつの大きな大学改革の内容は、「外部の教育・研究機関との連携」です。例えば、連携大学講座です。大学は、民間企業の進んだ研究機能や設備・人的な要素を大学の教育活動の中に生かし、一方、民間企業は、大学の基礎的な研究や教育の機能を企業活動に生かそうという制度です。民間企業の研究者たちが、大学院生等の研究指導ができる教員として認定され、博士論文・修士論文などの研究指導や論文審査を通じて大学教官と対等に協力して、院生の教育に携わることができるようになります。
もうひとつの観点が、社会との連携です。これには、ふたつの側面があります。ひとつは産業界との連携で、大学の中で開発された研究のうち企業活動に生かせるものの橋渡しをして一緒に行うこと。もうひとつが、地域開放です。従来の地域開放は、大学が持つものを地域の人たちに見せるという形での地域への貢献でしたが、最近の地域との連携は、地域のものを大学の体内に取り込むというものです。これにはたいへん大きな側面があります。
「国立学校設置法の改正」における「運営諮問会議」の設置に関係します。「大学の教育研究目標・計画」等について「学長の諮問に応じて審議し、及び学長に対して助言又は勧告」する機関の設置です。「当該大学の職員以外の者で大学に関し広くかつ高い識見を有する」人たちで構成されます。大学運営の基本に関して外部の意見を正式に聞く組織を各大学が設けることになりました。大学でできたものを外に出していれば国民に奉仕したことになっていたのですが、国民の意見を大学の中に取り入れなければならなくなったのです。これは、ボランティアの導入とも関係します。ボランティアを入れるということは、外部の意見を入れることでもあります。この視点が必要です。
「大学のものを外へ」、同時にまた「外のものを大学の内へ」ということです。
また、国立学校設置法の改正の点について、少し追加すると、評議会は、これまでは、意志決定権がなく意見調整の機関でしたが、組織、構成員、仕事を決めて法的位置づけを明確にしました。
ついで、「教育研究等の状況の公表」です。大学の情報を公開しなさいというのが国立学校設置法で決まりました。
(1)政府組織・機構の見直し
このような大学改革の流れを踏まえて、行政改革の流れを見てみたいと思います。かつて、「小さな政府・大きな民間」という文言が新聞紙上を賑わしました。社会の方針を決定する時に、代理者を立てその者が方針を決定して行くということを人類は2000年に亘って行って来ました。そして、社会の方針決定に関わる人の層を拡大してきました。いろいろな人が参画し始めると参加条件の差がなくなって来ます。そのことは、それぞれのひとが社会の方針決定に包含されることを意味します。「小さな政府・大きな民間」というのはこのようなことを指し、民主主義の軌跡上にあるものです。
それからもうひとつ、「行政事務のアウトソ−シング」という言葉があります。
経費を倹約するためにアウトソ−シングすると思っている人がいたらそれは間違いです。委託先の人件費のほかに管理費、税金が付きますので高くなります。アウトソ−シングは決して行政の縮小にならないと身に沁みていらっしゃる立場の方も多いと思うのです。では行政事務のアウトソ−シングの本質は何を意味しているのか。やはり「小さな政府・大きな民間」になるのです。同じ経済活動をするのであるならば、政府の中でその経済活動をするのではなく民間の側にその経済活動をさせましょうというのが「行政事務のアウトソ−シング」なのです。これもまた、民主主義の軌跡のひとつであると思います。「財政縮減」も同じ流れの中にあります。政府の財政縮減が、民間の経済活動の中に移って行くのがお分かりいただけたと思います。つまり、あらゆるところで、中のものと外のものとが流動化されて、次第に民間の力だけで社会の運営自体ができるようになって行く。そういうような時代を迎えているということになる訳です。これが行政改革の底流にあるものなのです。
(2)独立行政法人化の動向
ついで、「独立行政法人化の動向」です。独立行政法人化の動向も、「行政事務のアウトソ−シング」の軌跡上にあるものです。つまり、現在国がやっているもののうち、国が直接実施しなくてもよい性格のものを「法人」にしてもらうというのが独立行政法人なのです。もしかしたら国が直接やった方が国の経費自体としては少なくてすむかもしれないけれど、その中に民間の利益となる管理運営費を付けることによって民間の経済活動が活性化するのである、それが通常の行政事務のアウトソ−シングであると言いました。同じことがこの独立行政法人化の流れ中でも起こってくる訳です。
いま国が直接やっているけれども、民間にさせられるものはないだろうか。
ただし、日本はまだ開発途上ですから、現在検討されている独立行政法人化の脈絡の中ではまだ完全な民営というものはありません。しかしながら、一言でいいますと、国が直接やるというのは開発途上の証拠です。開発途上だから国が国民の総意を受けて、国民の代理として、すべて直轄でやってきたというのが長い歴史の中の流れであった訳です。国立大学もそのひとつである訳です。開発途上国ではほとんどが国営です。
独立行政法人化の動向自体として見てみますと、先発機関があります。平成13年4月から独立行政法人としてスタ−トする、国立病院、文部省の中では国立青年の家、少年の家、国立婦人教育会館、国立博物館、国立美術館、国立文化財研究所等です。
それぞれの機関は独立行政法人になることによって、失う利点が今の時点では大きいということで苦悩しておりますけれども、この流れの中で行っていくということです。例えば、文化財研究所では、文化財保存に関わる経費については別途予算要求を行うという形で、独立行政法人化に踏み切っています。
(3)国立大学の独立行政法人化の検討
平成11年9月20日に開かれた「国立大学長・大学共同利用機関長等会議における文部大臣のあいさつ」と文部省が示した「国立大学の独立行政法人化の検討の方向」という資料を見てください。文部大臣あいさつに、国立大学がこの時期になぜ独立行政法人化について検討しなければならなくなったか、あるいは検討する意味が凝縮されています。
独立行政法人の通則法というのがあります。その通則法の中には、すべての独立行政法人はこの通則法によって措置するということが書かれています。しかし、国立大学の場合には、文部省がトップレベルの学識者を9月になって急きょ集めて懇談会を開いて、議論の結果、独立行政法人化の方向へ踏み切らざるを得ず、いくつかの条件付きで検討するという方向を打ち出したのです。そのような流れの中で文部省の考えを、文部大臣あいさつの中から見てみます。
二つ目のパラグラフに、「このたび、国立大学を独立行政法人化する場合に、国立大学の教育研究の特性を踏まえ、組織、運営、管理など独立行政法人化制度全般について所要の特例措置等を検討する際の基本的な方向を整理するに至りました」と書いてあります。2番目に「独立行政法人化の検討の観点」というのがあります。どういうような観点に立って検討するのかが書いてあります。文部省としてはすでに、先程述べたような観点から大学改革を進めており、その大学改革を進めている一環として独立行政法人化の問題をとらえる。2行目にあるように「教育研究を含む国立大学の運営については、自主性と自己責任を基本としておこなわれるべき」であるということで設置審、国立学校設置法、教育公務員特例法も改正してきた。大学審議会の答申において大学改革はどういう点を重視してきたか。ひとつが「学問研究の動向や社会的要請等に応ずることができるよう、教育研究システムを柔構造化すること」であり、講座とか組織を大学自体がもっと柔軟に出来るよう柔構造化を図った。二つ目は、その柔構造を「可能とする責任ある意思決定と実行システムを確立すること」であり、学長の権限、学部長の権限、評議会と教授会の権限を明確化して、意思決定と実行システムを確立する。三つ目は、「不断の教育研究の改善を促すための多元的な評価システムを構築すること」であり、自己評価だけではなく、外部評価を行うこと。この外部評価に関しては、従来の学位授与機構から学位授与・大学評価機構を設置して、大学評価の機構を大学の外につくり、多元的な評価システムを構築した。これらが大学改革の提要ということです。これらの改革を実現するために独立行政法人化ではどんな条件が必要か。国立病院の独立行政法人化とは違います。少年の家や青年の家の独立行政法人とは違う条件とは何かということを次のパラグラフが書いています。この中に5つ書いてあります。「国立大学を独立行政法人化することによって、@教育研究及びそれを支える意思決定と実行の仕組みや人事・財務等における大学の自主性・自律性が確保され、さらに拡充することができるものである」べきである。柔軟な構造を自らできるような意思決定と実行システムが自主的にできるような条件が必要です。二つ目は、「長期的な展望に立って教育研究を展開できるものである」べきである。研究というのは、3年とか4年とか期限を切ってできるものではありません。ところが、独行法の通則では3年ごとに見直すことになって、3年ではとても足りません、長期期間が必要であり、実際には5年を提案しています。三つ目は、「教育研究に直接携わる教員について、自主性や主体性が十分に担保されるものであるかどうか」。教特法で教員は身分が保証されています。表現の自由、発言の自由、研究の自由、教育の自由というものが保証されている訳ですが、一般的な独行法によりますと、ひとつひとつ所管大臣の報告などが入ってきますから、こと大学の教育研究に関る人については、従来どおりの自主性や主体性が確保されるものでなければならない、そういう条件が欲しい。四つ目は、このような「教育研究の自主性・自律性を保証するため」に、通則法では主務省庁が第一義的に行うことになっていますが、「国によるものではなく、大学関係者等によって専門的見地から行うことができるもの」にしなければならない。大学評価機関などの第三者機関でやれるようにしなければいけない。最後の条件として、それらを実現し、世界的水準を保つために、予算も含めた「条件整備が図られ」なければならない。このような条件を示しまして、このような条件のもとに法人化してもよいと打ち出したのが9月20日です。
法人化すればどのようなメリットがあるのか、大学にとって法人化することはどのような意義があるのかというのは、以下に書いてあります。法人化すると、「国立大学が自主、自律性を高め」、「自らの権限と責任において大学運営ができ」ます。現在は、大学は行政組織のひとつです。しかしながら大学は行政組織ではなく、独立した法人格を持たせることが適切ある。なぜならば、国の監督や命令で行うのではなく、自らの権限と責任において大学運営ができるようにすべきだからです。ちなみに欧米諸国においては、国立大学や州立大学を含め大学には独立した法人格が与えられています。ニュ−ヨ−ク州立大学やUCLA(ウクラ)という名前でなじみのあるカリフォルニア州立大学などが有名で、予算は州から出ていますが法人格をもっています。
欧米諸国においては、国立大学や州立大学を含め大学には独立した法人格があって自らの責任と権限において運営を行っております。国によっては、独立した法人格は財政活動までできるようになっているところもあるそうです。いま日本はこの法律で施行しているような法人格とはかなり違った法人格でありますから、かならずしもイギリスを倣ったとかアメリカを倣ったとは思わないで、日本型の法人格の付与の仕方を検討しているのだと理解してください。最低限法人格を持つべきだというのが第一の意義です。持てば、自らの権限と責任において運営ができるではありませんか。
第二の意義は、大学の自主性と自律性が拡大されます。例えば、新しい分野の教育を行うために新しい教員が欲しいとしますと、逐一概算要求しなければいけません。いままでとは違った形でどのような点が違うか、学部はどう違うか、講座はどう違うか、逐一文部省に要求し、文部省から大蔵省に要求するというようにやらなければなりません。そういうことがないように自律性を持たせることができます。自主・自律性の中身については次の4つが指摘されています。
ひとつは、「基本組織を除き、各大学が主体的に決定、変更、改廃することが可能」となります。第2点は、「機動的かつ柔軟な教職員の配置が可能」です。大学独自な人事ができるということです。最近は教授人事については学長自ら決裁をしますが、委任事務でした。それが独自でできるようになります。第3点、給与法の対象外になります。大学が独自に給与の支給基準を決めます。従って、アメリカから著名な教官を呼びたいと思ったときに、現在は給与法の制約があり給料が低くなるから呼べません。しかし、学内の基準を独自につくれば、そのような給与も支給もできます。第4点、予算の執行が「教育研究活動の実態に応じて弾力的に」できます。今は予算の事項が決まっておりまして、その事項にしばられます。法人の予算として配られますと、弾力的な予算執行ができるということです。
第三の意義は、そうすることによって大学の個性化が進展します。個性化すれば競争力が増し、教育研究の多大なる進展が期待されるということです。
こういうような意義があるので、独行法そのものは大学という機関に馴染まないけれど、先のような条件を付してならば独行法人化した方が、今後の大学の発展によいのではないか、というのが9月20日に出された文部省の国立大学の独立行政化への検討の方向ということになります。
さて、皆さんの一番関心の深いことがこの大臣あいさつの「おわりに」で、実にさりげなく付いています。平成11年4月の閣議決定により国家公務員の定員は、「『平成13年からの10年間で少なくとも10パ−セントの削減を行うとともに、独立行政法人化により25%の削減』を行う」と政府は決めました。合わせると35%になります。すさまじい数になります。文部省としてはこの定削を横目で睨みながら、国立大学が「独立行政法人化等により25%削減」の中に移れば、本体として10%削減は対象外になるのではなかろうか、という目論見を持っていまして、平成13年から始まる35%の定削と関連する独立行政法人化の方向性は、平成12年度の早い時期に政府が具体的に決めることになっています。
(1)国立大学附属図書館の法的位置
最後、そういう流れの中で図書館はどういうことになるのかということを見てみたいと思います。先程、平成3年の「大学設置基準の改正」で大きな変化があると申し上げました。大学運営自体で大きな変化があったのですが、その一環として図書館もたいへん大きな変化がありました。第36条の第1項の三「図書館、医務室、学生自習室、学生控室」など「少なくとも次に掲げる施設を備えた校舎を」つくるという条項があります。これは平成3年もそれ以降も同じです。ところが第38条(図書等の資料及び図書館)というところが大幅に変わりました。平成3年以前はどうなっていたかといえば、第38条第1項「大学は、学部の種類、規模等に応じ、図書、学術雑誌、視聴覚資料その他の教育研究上必要な資料を、図書館を中心に系統的に備えるものとする。」とありました。このあと揃えるべき図書、学術雑誌等の量についての表があったのですが、それがなくなりました。かわって、機能についての記述がなかったのですが、それが書き込まれました。「2 図書館は、前項の資料の収集、整理及び提供を行うほか、情報の処理及び提供のシステムを整備して学術情報の提供に努めるとともに、他の大学の図書館等との協力に努めるものとする。」とあります。
この中で大事なことがふたつ言われています。ひとつは、図書館は図書館の中で図書資料や学術雑誌などを備えればいいと言うことではなくて、全学全体の図書資料とか学術雑誌などの収集の要になるとともに、システムを整備して学術情報の提供に努める。学内の学術情報の流通基盤になるということが、ここで初めて書かれたのです。これは画期的なことなのです。はじめて機能が書かれた訳です。図書館は全学的な図書・雑誌の流通と全学的な学術情報の流通の基盤整備の中核になるということが第38条の改正によって初めて書かれたということです。
そして、3番目。これは実は前からあったのですが、大変に嬉しい記述があります。「図書館には、その機能を十分に発揮させるために必要な専門的職員その他の専任の職員を置くものとする。」とあります。4と5は前からありました。4は建物ですが、「適当な規模の閲覧室、レファレンス・ル−ム、整理室、書庫等を」置きなさいということと、「閲覧室には学生の学習及び教員の教育研究のために十分な数の座席を備え」なさいということ。平成3年以前はこの十分な数というところが、学生数の十分の一、10%という数字が書かれていました。本の整備すべきものというのが数字で書かれていると同じように、座席数が数字で書かれていました。それが消えました。
平成3年の大学設置基準の改正で、図書館の機能が全学的な図書・雑誌の流通と学術情報の流通の基盤整備の中核であるということがうたわれるようになりました。これが一番大きな変化です。
それから、もう一つ国立学校について言いますと重要なのが、国立学校設置法第6条です。第4条(大学附属の研究所)で、大学全体に寄与するために附置研究所を置くとありますが、第6条に附属図書館という項目があります。「国立大学に、附属図書館を置く。」と書いています。これはどういう意味かと言いますと、国立大についてだけは、附置研究所に並ぶ位置で附属図書館というのを置いています。つまり、建物ではなくて機能として、大学全体に寄与するための施設として置くと書いています。
(2)国立大学附属図書館の組織・定員・機構
最後に、「第5節事務組織等」というのがあります。
事務組織がどうなっているかを認識することが、これからの大学改革でとっても重要です。事務組織は現在この第5節の第28条に書いてあることと第29条に書いてあること、それから第29条の特例と書いてあるところに集約される訳です。最初に事務局の中に置かれている課というものは、第28条にあるように「庶務、会計及び施設等に関する事務を処理させるため事務局を、及び学生の厚生補導に関する事務を処理させるため厚生補導に関する部を置く」とありまして、基本的には事務局と厚生補導の部、学生部である訳です。事務局は、庶務・会計・施設だった訳です。第29条の学部等の事務組織で、「国立大学の学部、教養部、附置研究所、附属図書館」等には、「その事務を処理させるため、規模に応じて、それぞれ事務部又は事務室を置くことができる。」となっていまして、図書館が先程の脈絡で附属研究所と同じように大学に附属された施設なので、その附属の事務をするために事務室を置くとなっている訳です。ところが、第29条(事務局の特例)という条文があります。この中にふたつの種類がありまして、最初の第29条の2項のところで、新設の大学につきましては、前条の規定にかかわらず、「庶務、会計、施設、学生の厚補導等に関する事務を併せて」事務局で行うとなっていまして、ご存じの図書館情報大学の図書館情報課とか医科大学の図書課というのは全部事務局に入っています。筑波大学も事務局に入っています。そういう組織になっている訳です。
このように挙げてみますと、次第次第に本来の形のものが少なくなっていることにお気きづきになると思いますが、事務組織が統合化されて行くようになって来ています。この事務組織の統合化というものが大学図書館の改革と非常に関連が深いということを頭の隅に置いて、大学図書館は今後どうしたらいいかということを見ていってもらいたいと思います。
こういうような状況になっておりまして、従来、図書館というのものは大学の附属施設で、図書館の事務部はその附属施設の仕事だけをしておれば良かったのです。ところが、大学自体が大幅に変わって行きます。図書館の仕事も変わって行かなければならなくなって来ます。そうしますと、図書館の仕事がどういう風に変わってきたかというのを見ながら事務組織の改革や大学の仕事の目玉を考えて行くということになります。今日は大学図書館の改革の業務マタ−ついては、時間もありませんので、お話しをしません。業務マタ−について簡単に言うと、4ペ−ジの4に集約されます。皆さんは教官から言われた資料を買って図書館に並べ、要求された資料を利用者に利用させているのが図書館の普通の仕事だと思っていらっしゃると思うのですが、そういうようなものが大学の教育活動とどのように連動しているか、あるいは教育研究活動とどのように連動しているかということについて、あまり認識する機会がないと思えるのです。しかし、大学の図書館はもう図書を保存する保存庫ではなくなっております。さっきの設置基準の改正によって、そのような隔離された形のサ−ビス機能としては機能しなくなっています。どういうことかと言うと、一番大事なのは、(1)大学教育と密接に連携した活動であるかどうかです。この大学教育と密接した活動ということでは、古典的にはリザ−ブブックスというのがあります。教官の指定図書です。教官の指定図書を教官から要求されているからそれを買うという風に単純に思っているのか、あるいはカリキュラムの編成の改正とどのように連携しているかということを認識するかしないかでは大違いです。シラバスをみんな大学がつくるようになりました。そのシラバスの参考に挙げられている図書を自動的に図書館の中で備えるというシステムをつくっていくかどうかというのは、一番の基礎になると思います。教官から言われてないから買わないという、シラバスには掲げてあるのだけれど買わないという大学が多数あると思いますけれども、本当は大学のシステムの中できちんとして欲しいのです。つまり、大学の教育委員会などでカリキュラムをつくります。教育委員会が各教官にペ−パ−を出させてシラバスをつくります。シラバスの原稿の発注段階でそこに書き上げられいる参考資料を図書館の方に出してもらって、それが入っているかどうかチェックしなければいけないものですから手間暇かかるかも知れませんけれども、それを4月1日の新学期が始まるまでに図書館はきちんと備えつけておく、それくらいのことをシステム化しないと、大学の教育改革の動向に図書館は対応できないということになります。これは基本だと思います。学芸大学では大変面白いシステムを採っています。全部のシラバスではないのですが、いわゆる教養課程に関する講座については図書館が教育委員会と提携して、教育委員会が来年度の教養課程講座を決めますと、館長名でその教官に依頼し、教養課程の本の案内(シラバスと違います)、教養課程を受ける前にあらかじめ読んでおいて欲しい本、あるいは受けながら読んでおいて欲しい本というのについてのエッセイを1ペ−ジか半ペ−ジずつ書いてもらいます。そして、その本の書誌事項がその下に書いてあるというようなものを毎年作っているのです。これはとっても評判がいいのです。書き方は様々です。当番を組んでいますから、先生によっても様々ですが、居ながらにしてそこに挙げられている参考図書を紹介しながら1時間分の講義が凝縮されているような紹介文もあります。あるいは参考図書とは全然関係なく、この教養講座の中では自分はこういうことをしたい、以下の本を読んでいてくださいという書き方もあります。この教養講座ではこういうことをしたいけれどと言いながら、たった1冊の本を紹介だけして、下の方にたくさん列挙しているという紹介もいろいろあります。それを、いつも12月にもらいまして、図書館で発注して4月までに備えます。しかも学芸大学の場合は複数備える本というのと1冊備える本というのが教官からその中に指定されていまして、たくさん読まれそうな本はあらかじめたくさん買っておくということをしています。このように教育活動にシステマティックに連動した本を揃えるというのが、一つ目です。もうひとつが、新しい動向ですが、大学教育の中における情報検索について図書館から積極的に働きかけることです。これはいくつかの大学で行われています。日本で早くから行われているのは国際基督教大学(ICU)ですが、そこは新入生に半年間1単位として図書館の利用に関する情報検索論みたいなものを単位化しているのです。そして、図書館職員が図書館の中に呼んだり、教室に行ったりして講義しているのです。この新しい流れは、長岡技術科学大学、高知医科大学、東京大学、新潟大学、横浜国立大学でいろいろな形で始めています。情報検索がいままでのように単純でなくなります。情報処理の技術は情報処理系の先生が教えられますので、技術を教えるのではなく、世の中で縷々転変する情報群をどのように調べたらよいのかというものを教えることは、図書館職員の方がずっと得意なのです。それを単位化する。情報検索の活動を単位化するという動きを是非してもらいたい。それは学生さんが2年3年になったときに、自分で調べてレポ−トを書くというときに非常に役に立ちます。参考にお話しますと、長岡技術科学大学では、一番最初が正規の教官による導入論です。大学の授業、大学で教育を受けるということと調べるということについて1時間ぐらい講義をします。その次に、ふだん図書館で行うような、図書館利用についてのオリエンテ−ション。図書館のオリエンテ−ションは別にやっているのですけれども、ここでは授業として1時間たっぷりやります。それから長岡技術科学大学の中では、情報検索論をコンピュ−タだけにとどめないでブックマテリアルから全部始めています。参考図書の使い方について(こういう分野にはこういうものがあります、というような)、コンピュ−タで使う学内の情報検索について、それからインタ−ネットを使った情報検索について、という内容で、半年間で1単位15回でしょうか。私は、「学術情報と図書館」というようなお話を中程で持って、一番最後に総括を担当しています。制度論を途中で理解させながら、実際にやってもらうというようなことをしていますが、一番最後の部分で検索した結果をレポ−トへ反映させるための「レポ−ト作成」について、という項目も入れてひとつの単位にしています。これが長岡技科大学です。横浜国立大学は、もう少し教養学的な分野が多くて、複数の学部がありますから、それぞれのティピカルな分野の先生に「私と図書館」とか、「経済学における文献の使い方」とか、「生命科学と情報検索」とか、それぞれ最先端を切っているような教官に自分が情報検索とか図書館についてどのように関って来たかということを、15回の内の続けて7回位お話してもらい、そして後の5回位を図書館職員に検索とシステムについて話させて、館長先生が最初と最後を締めくくるというような形で行っています。高知医科大学になるともっと専門的です。これは今、医学部が情報検索で一番進んでいるのです。要するに、高知医科大学の人の話を聞いてみると、何時間あっても足りないというのです。それは化学系でも同じであると思います。ケミアブひとつとっても、いろいろな使い方があるというようなことがあり、そういった情報検索を単位化して行くということです。こういう動きが今ありまして、大学教育と密接に関連した図書館活動というのが一番重要だと思います。
その次に大事なことが、(2)大学の研究活動と密接に連携した活動であるかどうかです。これは、大学の教官の研究活動のもっともカレントな情報を図書館がどこまで捉えているかということなのです。これは筑波大学の電子図書館システムが完成したことにより、筑波大学ではものすごく集めやすくなったと思います。今までは本を寄贈してもらうということによって、大学教官の研究活動というのが図書館をステ−ションにして学内外へ初めて出るというようなことだったのです。実際は市販されている方が早かったりということがありました。しかし、電子図書館に載せてもらう、中間活動でもどのようにして載せてもらうか、ということを研究部と協力をして行っていくということによって、学内外へ開かれたものにして行くのです。これはもう、一番最初の学校教育法の改正の中の「大学の情報公開」の「研究情報の公開」をどこでどのようにするのか学内的に相談することだと思います。研究協力部というのがある部署でさえも、研究協力部でそのサ−バ−を維持したり公開して行くのは大変だと思います。ですから、研究協力部が窓口になって研究活動の情報は集めなければならないと思いますけれども、それを学内外に提供して行くのを図書館がやるなどの仕組みを作って行くというようなことです。
一言でいうと、(1)と(2)をやろうと思うためには、図書館がいままでのように図書館の中だけでひとつの仕事が完結するという時代は終わっってしまっているのです。なにかをしようと思うと、大学の中でさえも関連する部署と相談して、そちらの情報をうちの図書館から出すにはどうしたらいいかとか、そちらの情報に協力するには図書館が何をしたらいいのかとかをやって行かなくてはいけなくなってくるのです。そういう点では、課長さん、部長さん、館長さんの仕事が重要だと思います。横の会議はその方々が出ていますので、ああいう動きには私のところのこれが使えるよとか、こういうことが協力できるよとか、いやそういう動きがあるのならば、その情報はこちらの電子図書館から流させてくださいよとかいうことを、その人たちが積極的に行っていくのが重要です。筑波大学で電子図書館がかなり大規模な形で成功しましたけれど、成功している背景にはそれがあるのです。自分が部長だったから、部長がこのようにした、部長会議でこのように連携を取った、というのは当たり前ですけれど、その時に館長先生が、大学の中枢的な会議の中で、図書館でこういうことをすると大学院のためにはこういうように役に立つとかいうことを一生懸命いろいろなところでお話しくださいまして、その結果、例えば、大学院の学位論文は審査が終わると学務課に提出しますが、学務課に提出する時に一緒に図書館にも提出してもらうという仕組みを作ったり、図書館に提出したものを電子図書館に載せていいかどうかということも、その時に、アンケ−ト方式の申請書に書いて、一緒に提出してもらうというようなことを大学院の委員会で審議してもらいました。そういうような過程を経てきているのです。それについて大変努力をしてきてくれた人々が今日の聴衆の中にいますから、ここで改めて感謝したいと思います。職員もそのためにたいへん努力しました。分かってくれないような部署にも説明に行かなければなりません。先生方はこういうことはすぐ分かります。話を始めると先生方はすぐ乗ってくれます。なかなか動きにくいのは事務局同士です。しかし、ぜひ事務局同士が連携して、図書館は孤立しては活動できないのだということを思って、教育活動と研究活動に連携した活動を展開して行って欲しいと思います。そして、地域社会と密接に連携した、これについて茨城大学の最近の活動は目を見張るものがありますが、ぜひ今度は地域のものを大学図書館の内部に取り入れてみるというような発想があったら素敵だと思います。
この嵐の中を生き残るためには、図書館だけのためではなく、大学のために、大学の目玉商品に図書館がなるのです。これは留学生の募集のときにも殺し文句になります。立命館大学などでは非常にうまく使っています。
ちょうど時間になりましたので、これで私の話を終えたいと思いますけれども、大学改革の動向を睨みながら図書館がこれから発展をしていくためには、動向の波を先取りした形で大学の目玉商品になっていただきたい。そのために皆様の活動を心から期待して、このお話を終えたいと思います。