新 論

 水戸学の攘夷思想を理論的に体系化した著作。会沢正志斎著。国体(上・中・下)・形勢・虜情・守禦・長計の7 篇から成る。文政8年(1825)3月の成立。幕府が同年2月に外国船打払令を公布するや、これを泰平になれた世情を刷新し、弛緩した幕府政治を建て直す好機を与え、水戸藩主徳川斉脩(なりのぶ)にそのための具体策を建言しようとした。 これが本書執筆の動機である。本書の論旨は、沈滞した民心を振いおこして国防を強化し、内外から迫りくる政治的危機を克服し、国家の富強を実現するための方策を明示するところにあり、尊王と攘夷は、その民心糾合の手段としての意味をもっていた。 開国によって、民心の糾合と士気の昂揚の必要性が強まると、本書は写本や各種の版本が出て普及し、水戸学の名声を高め、人心に大きな影響を及ぼした。


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