『菅文庫の国書のなかの史書について』
  鈴木 暎一

 菅文庫の国書について、大枠を『内閣文庫国書分類目録』の方式に則り、分類したものが『菅文庫国書目録』で、目次は次の通りである。
 一総記、二神祇附国学、三仏教・基督教他、四言語、五文学、六音楽・演劇、七歴史、八地理、九政治・法制・故実、一〇経済、一一教育、一二理学、一三医学、一四産業、一五芸術、一六諸芸、一七武芸、一八準漢籍
 右の一八項目を大項目とすると、その下に二から六項の中項目が配され、さらにそのなかに必要に応じて小項目が立てられている。
 以下のインターネット上の書目は、「七歴史」の項(中項目として、1総記、2日本史、3外国史がある)のなかから、まず、
(一)江戸時代後期に刊行または筆写された書目。
(二)水戸学関係の書目。
(三)菅政友が筆写したとみとめられる書目。
を選び、それらのうち、便宜『目録』の掲載順に約一三〇部ほどを示したものである。
 ちなみに、「七歴史」の中項目「2日本史」のなかには、総説(一〇)、通史(三一)、時代史(三七)、雑史(六六)、地方(三二)、人物(一九)、変災・事件(三七)、史論(二〇)、伝記(一五〇)、陵墓・墓所(一五)、系譜(六〇)、雑(一二)、史料(八〇)、外国関係(三五)の一六の小項目がある。( )の中に記した数字は、各小項目に入っている書目数であるから、「2日本史」は合計六〇四部、このほか、「1総記」に二部、「3外国史」に二六部で、これらを含めると「七歴史」の掲載書目は六三二部である。
 したがって、以下に示す約一三〇部の書目は、「歴史」全体の約二〇%ということになる。次年度以降、まずは「歴史」の書目全体について、そのあと他の大項目にまで拡大してゆきたいと考えている。
 この「歴史」全体を通してみると、政友の歴史への関心が、年代的にも、地域的にもかなりのひろがりをみせていて、特定の時代とか、出身地である水戸ないし常陸といった地域とかに傾斜したものでなかったことが知られる。それだけに、本項に関しての、政友蔵書の特色を摘出することに困難を感じるのであるが、あえていえば、
(一)「系譜」に関する書目がまとまって収集されているように見受けられること。
(二)いわゆる赤穂事件について、「赤穂義人録」から「芝泉岳寺記録写」まで14部の書籍ないし史料(「義人遺草」や「赤穂義士手簡」など)があり、この事件に大きな関心を寄せていたのではないか、と考えられること。
(三)「五文学」の項をもあわせみると、新井白石と頼山陽の著作・詩文が比較的目立つように思われること。
の三点を指摘できようか。ただし(三)については、政友の個人的関心の強さをというよりも、幕末から明治にかけて両者の著作・詩文が全国的に読まれ、普及していた実状の一端を示すものとみた方がよいかもしれない。

(本学教育学部教授)

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Last updated: 2001/ 3/26 16:00