前 間 孝 則 著
『YS―11国産旅客機を創った男たち』(講談社)

  最近「独創性」みたいな言葉がもてはやされ、日本の技術は独創性に欠けてい
たなどと批判されることが多いけど、僕には違うように思える。技術というのは、
長い蓄積があって初めて花開く。だから何も蓄積がなければ真似るしかないのだ。
YS-11 開発のときにも、若い技術者は海外の設計をとにかく真似る。しかしその
過程で知識を蓄積させ、技術レベルを向上させていく。だから学生諸君は、修業
時代には真似ることを恥と思わないで欲しい。と同時に、いつかは他から真似ら
れるよう新技術を創造してやる、という気概を持ち続けて欲しい。  
 ところでYS-11 を製作した会社は、最後には経営的に破綻し潰されてしまう。
敗北のときの振る舞いに、その人の真価があらわれるという。この本では、でた
らめな設計をし後は知らん顔の高名な設計者や、最後まで部下の再就職のために
奔走する上司など、色々な生き様が語られる。自分なら、そのときどのように責
任をとるのか、考えてみて欲しい。 

乾  正 知(工学部・システム工学科)

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