暖衣飽食、まれにみる豊かな世の中になった。しかし、手放しで喜んではいら れない。 『老子』は変な書物である。断片のように短い章、それでいて鋭い警句。悪く いえば、一癖も二癖もある。だが、それがまた、『老子』の魅力でもあろう。 ─例えば、20章では、ずばり、「学問をやめれば憂いはない」。また、「欲を少 なくして」(19章)、「足りることを知れ」(46章)。そして、小国寡民、田舎 の小さな村里こそ理想社会、と断言する(80章)。福永氏は雄弁家らしい。その 解説には迫力がある。説得力もある。あたかも、口数すくない老子に代わって弁 じているようで、その対照はなかなか面白い。また、字句上の注解が豊富である のも有り難い。ただ、学生の皆さんには詳しすぎ、かえって煩雑かも知れない。 それなら、その部分は読み流しておけばよい。 ─とにかく、どの章でもいい、気軽に当たってみて下さい。