牧 野 賢 治 著
『理系のレトリック入門 科学する人の文章作法』(化学同人)

 大学生ともなると、そろそろまともな文章を書く能力が要求されます。文章を
作るための基本的な作法を紹介した本が、この『理系のレトリック入門』です。
 著者は現在、東京理科大学の教授ですが、長年、毎日新聞社編集委員として科
学・医学の記事を担当してこられ、ご自身の執筆体験をこめて、この本をまとめ
られました。「−この本は研究論文の書き方を述べた入門書ではない−」と、本
のまえがきに断ってあるものの、研究論文を書くための作法として学ぶべき内容
も豊富に盛り込まれています。                      
 私はこの本を大学生協の本屋で見つけ、その夜、一気に読み通してしまいまし
た。新聞記者として、常に一般読者を念頭においた文章を書いてこられた著者だ
けに、読みやすく、文体はさすがに一流です。私にとって、この本の第6章と第
7章が一番ためになりました。文章の論理を曖昧にする「が」の乱用を戒め、  
「もの」、「こと」、「など」のごまかしの発想を鋭く指摘しています。   
 文章の作り方の訓練を、私達は中学・高校でろくに受けてきませんでしたので、
この本で急ぎ補うとよいでしょう。もっと専門的な研究論文を執筆したいならば、                                 
 木下是雄 著『理科系の作文技術』(中公新書)             
を推薦します。また、文章作法について楽しく、おかしく知ろうとするなら、 
井上ひさし 著『私家版日本語文法』(新潮文庫)              
を薦めます。さらに、外国人留学生を意識して書かれた、          
 山崎信寿 他著『理工学を学ぶ人のための科学技術日本語案内』(創拓社)  
は、分かり易く日本語の基本を学べます。                 
 書く力が近年の若者に不足してきたことを憂い、大学入試に小論文を課したり、
大学初年度に「日本語表現法」といった授業科目が各大学に作られています。文
章を書く力が落ちた理由はともあれ、書く力をつけなければなりませんので、
Students must write !上手な文章を書く能力は、あなたの一生の財産になり、
あなたへの評価が明日から大きく変わります。

大 西 和 榮(理学部・数理科学科)

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