井 上   真 著
『焼畑と熱帯林』(弘文堂)

 世界の森林は、確実に減少している。なかでも熱帯林は、年間に一千万ha以上
が減少するといわれている。本書は、その熱帯林と密接に関連して営まれている
焼畑システムのメカニズムと荒廃を、インドネシア東カリマンタンのフィ−ルド
調査から明らかにしている。テ−マは、あくまで持続的なシステムとしての焼畑
を中心にしている。が、自然とのバランスを保つ社会システムや貨幣経済との関
係からみたシステムの崩壊過程の分布など、アプロ−チが面白い。      
 とくに、規制的な共有地管理としての「タイトなコモンズ」の考え方とそれを
導く過程は、自然環境の保全、その中にある半自然・半人為的システムの捉え方
に新たな視点を見出している。自然の保護・保全に興味のある人には一読を勧め
たい。きっと、自然・人の関わりは、一面的な見方では、不十分だということが
分かると思う。 

小 林   久(農学部・生物生産学科)

ラベルの記号 612:Yak