梅 原   猛 著
『「森の思想」が人類を救う』(小学館)☆

  二十一世紀における人類の危機として、(1)核戦争の危機(2)環境破壊の
危機(3)精神崩壊の危機の三つをあげている。この三つの危機から人類を救い
出すための哲学の主要部として、日本の文化が重要な意味を持つ。そのためには、
日本の宗教を理解しなければならない。                
 著者は、日本文化は、森の文化というべき縄文文化を基礎に形成されていると
主張し、この狩猟採集文化の宗教のうえに農耕文化、渡来人の宗教がかさなって
いると考える。アイヌや沖縄の文化に日本の宗教の原型が残されていると考える。
アイヌの熊送り、イオマンテが一番わかりやすい例である。日本文化と宗教の起
源を実にわかり易く学ぶことができる。                
 生きとし生けるものはすべて平等であり、人間だけが尊いのではない。木の生
命はすべての中心であるとの考え方が、人類を救うと、日本を代表する哲学者で
ある著者は約 240ペ−ジの本書で主張している。

小 林 正 典(工学部・電気電子工学科)

ラベルの記号 160.4:Mor