松 山 幸 雄 著
『「勉縮」のすすめ』(朝日文庫)

 本書は、政治外交記者だった著者がアメリカ特派員生活の経験をもとに、「ニ
ッポンを再検」した好著である。                     
 内容は「勉縮のすすめ」から始まり、「国際社会で通用するために」、「階級
なき社会における麦ふみ」まで28のエッセイで構成されている。       
「勉縮」とは、「軍縮」からヒントをえた著者の造語である。70年代に米ロ(旧
ソ連)が無制限の軍拡のおろかさに気づき、軍縮交渉を開始した。これに対し、
日本の受験勉強のエスカレ−ションへの警鐘が「勉縮」に込められている。 記
 憶力競争に勝ってきただけで、自分の意見をもたぬ受験秀才たちは、国際社会
では通用しない。責任感、表現力、度胸、敬愛、機転、馬力などの人間としての
修養や訓練を大学時代にいかに身につけるか?著者の10年あまりの特派員として
の体験にもとづく種々の提言は、説得力がある。              
 最後に、「勝負は冷や飯の食い方にある」との著者の指摘は重要である。順風
満帆で大学生活をむかえる諸君だけでなく、むしろ「でもしか」で入学し、主体
的、積極的に現実に立ち向かえない新入生に、本書をお薦めする。

前 川 克 廣(工学部・機械工学科)

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