河 野 豊 弘 著
『変革の企業文化』(講談社現代新書)☆

 「企業文化」という言葉は、流行語のように使われ、類書も多いが、企業文化
を人びとの「信念」とか「仮定」とか定義するなど、きわめて曖昧な概念でもあ
る。                                  
 「企業文化」とは企業のメンバ−が信じこんだ価値観や考え方、行動パタ−ン
全体をいい、それは公式の戦略や組織などと異なり、組織の構成員の本音となり
実際の行動に日常的に結合するものをいう。                
 最近の厳しい企業環境の中でも従業員が生き生きととして新しいアイディア、
戦略を生み出して実績をあげている会社がある。一方、安全第一で外部環境への
感受性が低く、新しい戦略も立てられない企業もある。           
 本書では意思決定のパタ−ンを企業文化の特性としてとらえ、その類型化を試
みている。事例も多く企業文化についての基礎理論や手段の類型について要領よ
く論じており、新書版としては充実したものになっている。巻末の参考文献も入
門として役立つ。

小宮山 恵三郎(人文学部・コミュニケ−ション学科)