木 下 直 之 著
『美術という見世物』(平凡社)

  「テイファニ−で朝食を」でオ−ドリ−・ヘップバ−ンと同じアパ−トに住ん
で、いつも騒動を巻き起こす日本人を観たことがあるだろうか。初めて、その場
面を見たとき、顔から火が出るほど恥ずかしい気持ちになった。ハリウッド映画
に日本人が登場するのを、腰の座りが悪くならずに受け入れられるようになった
のはいつ頃からだったろう。                      
 本書は、いつの間にか忘れてしまった、日本人であることの恥ずかしさについ
て「美術」から考えてみようとしている。それによって、私たちは「近代」がど
うしても捨ててしまいたかった「恥ずかしい日本」にこそ、日本人の本性があっ
たことを知る。                             
 「しばしばそうであるように、近代美術をリアリズムの系譜だととらえながら
高橋由一にはその先駆者、あるいは開拓者という地位しか与えることはできず、
由一の絵画のリアリズムは誰が見たって貧しい。」

小 泉 晋 弥(教育学部・美術教育講座)

ラベルの記号 702.1:Kin