湯 川 泰 秀・向 山 光 昭 監訳
『パイン有機化学 1、2』(広川書店)

 初版(1960年頃)から大人気のCram&Hammond の教科書を継いで、Pineが単独
名で第5 版として出版した。最初の基礎部分は有機化合物の特徴、有機化学反応
の基礎、立体化学、命名法と同種教科書とあまり変わらない。専門部分は他の教
科書の様に官能基の種類による化合物群に分けて解説するのでなく、電子の動き
で説明できる反応機構を中心にしている。化学全般を横断的に理解するための原
理がないのが現状なので、化学の教科書は各論の羅列になりがちである。すべて
の有機化学反応は電子の動きで理解できるので、反応機構を中心に解説している。
例えばカルボニル基は結合生成と結合分解に関する機構上の概念を理解しやすい
官能基なので、カルボニル基に関連した反応を用いて種々の反応の機構が解説さ
れている。                             
 学生諸君も有機化学反応の電子の動きを理解し、さらには反応物質の電子の動
きから生成物を予想できる様になってもらいたい。そのためには随所に用意され
ている演習に挑戦することも大切である。もちろん大学院への進学を希望してい
る諸君にも十分なレベルの内容である。

仲 野 義 晴(理学部・自然機能科学科)

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