赤瀬川 原 平 著
『反芸術アンパン』(ちくま文庫)

  反芸術とは既成の芸術の全てを否定する態度のこと、アンパンとはアンデパン
ダン展の略で、無審査展覧会の意味である。                
 1949年、読売新聞社主催の出品料さえ払えば誰でも出品できる(実際、 大家と
小学生の作品が一緒に並んでいた)無審査展覧会が開催された。美術学校の学生
であった著者は10回展から参加するが、この頃から絵画の枠を超えた得体の知れ
ない表現や廃品を使用した異様なオブジェが続々と登場し、会場は名状し難い熱
気に包まれていく。そうして遂には自己破壊的なエネルギ−の坩堝と化し狂騒の
果てに中止されてしまう。                            
 本書はこの顛末を若きア−ティスト達の行動の軌跡を中心に回想したものであ
る。'60 年代、それは日本の現代美術にとっても青春であったのだ。著者はその
後、千円札事件被告、前衛作家、イラストレ−タ−等をへて、小説『父が消えた』
で芥川賞を受賞。現在は路上観察による写真作品等を制作している。

十 河 雅 典(教育学部・美術教育講座)

ラベルの記号 706:Han