生命操作研究はやめなさい、という内容を期待しては失望する。まえがきの中 で著者は白状している。「第一章から第五章までの記述は、生命操作の面白さを 説き、いたずらに読者の好奇心を誘っているかのごとき印象を与えるかもしれな い」。しかり。人工受精から始まって胚移植、体外受精、核移植とクロ−ン、キ メラ、さらには遺伝子操作の家畜生産への寄与にいたるまでの動物バイオテクノ ロジ−の全貌を、専門用語の使用を最小限に留めてほぼ余すところなく解説して いる。生命操作の面白さが実によく分かる。 最近、体細胞の核を使った核移植の成功がヒツジで報じられた。クロ−ン人間 はもう目の前である。動物バイオテクノロジ−の進歩は留まるところを知らない。 生命操作とその倫理について考えようとする人は、まずは生命操作の何たるかを 本書によって知ってから始めてもらいたいと思う。動物バイオテクノロジ−の基 本書の一つとなるものである。