本書は1974年に第 5回大宅賞を受賞した本で、当時の英語教育界に大きな波紋 を投げかけた。著者が、権威ある留学制度で渡米しようとしていた日本人高校生 の英語の発音を聞いて「ひと言も」わからなかったというエピソ−ドを紹介した ところから、日本の英語教育への挑戦の書と受けとめられたのである。しかし、 本書における著者の意図は、日米の文化の違いを知らずに、英語を単なる技術と して習得しようとする日本人に対して警鐘を鳴らすことであったように思われる。 本書は、アメリカでの生活経験の長い一主婦が大学生を集めて聞いた英語塾の 話を中心に展開される。そこには、日本人の英語に対するさまざまな思いが描か れていて興味深い。それらは要約すれば、英語に対する憧れと拒否という矛盾す る態度である。英語をことばとして使いこなせない日本人の焦りを著者はよく捉 えており、それに対して何らかの解決の指針を示そうとしているかに見える。