黒 田 日出男 著
『謎解き 洛中洛外図』(岩波新書)

 歴史学は暗記科目ではない、ということを実感させてくれる本である。歴史学
とは、史料(何も文学史料とは限らない)を読み解くことによって謎を探究して
いく学問である。本書で取り上げる謎は上杉家(あの謙信の子孫)に伝わる『洛
中洛外図屏風』にまつわるもの。この屏風は戦国時代の京都の様子を描く。金泥
が施されとても美しい。では、この屏風はいつ作られたのか。作者は誰か。誰が
制作を依頼したのか。誰がいつ上杉家に贈ったのか。織田信長が自分が京都を制
圧したことを見せつけるために謙信に贈ったというのは本当か。迷宮入りしそう
なこれらの謎を筆者はホ−ムズよろしく鮮やかに解いていく。我々読者はワトソ
ンになってついていこう。歴史学を学ぼうとする人はもちろん、歴史はそれほど
好きではないという人にも「学問とはどうあるべきか」をこの本から体験してほ
しい(そのついでに、歴史好きになってもらえたらもっとうれしい!)。   
いやいや、謎解きが好きな人は本来歴史好きなのである。探偵小説を読むように、
本書を楽しんでください。

京 楽 真帆子(人文学部・人文学科)

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