小 林 康 夫・船 曳 健 夫 編
『知の技法』(東京大学出版会)

 知(識)には二種類のタイプがあるように思う。一つはそれを得ることで、積
み重ねられるように多くの物事がわかっていくタイプの知(識)。もう一つは、
それを得ることで、それまでの漠然とした・自己満足的で・常識的な思いこみか
ら自由になることができる。タガを外してくれるようなタイプの知(識)。  
 本書は1年次生の「基礎演習」用のテキストとして編集されたものだが、とり
わけ後者のタイプの知(識)の多様なあり方をわからせてくれる(いわゆる文科
系の学問にとって後者のタイプの知(識)は本質的だが、理科系の学問にも重要
だ)。                                
 「マドンナの発見」でも「日本的反逆と正当化の理論」でも第2.部で興味を持
った章を一つ、二つ読んでから、第1部に戻って通読、というのが入りやすいが、
自分の「おとなしさ」や「優等生」的なところに不満がある人は「結び−『うな
ずきあい』の18年と訣れて」から読むのも面白いだろう。

木 村   競(教育学部・知識経営講座)

ラベルの記号 002:Chi