藤 沢 周 平 著
『蝉しぐれ』(文藝春秋)

  図書の推薦依頼があったとき、一人ぐらい、自分が心から好きな作家の本を紹
介するのがいても良いだろう、と考え選んだのがこの本。藤沢周平は、学生諸君
にはあまり訓染みがない作家だろう。なにしろ時代小説である。若者向きではな
い。でもだまされたと思って一度読んでみて欲しい。「市塵」のような固い歴史
小説から「闇の傀儡師」のような活劇小説まで、どれ一つとして駄作がない恐る
べき作家なのだから。紹介した「蝉しぐれ」は、藩の内紛で父を失った少年の成
長を描いた作品。罪人の子ということで遭遇する様々な苦難に、正面から向かい
合い乗り越えていく姿を通して、「真剣な生き方」というものを考えてみて欲し
い。苦労が大きいほど、それを乗り越えたときの喜びも大きいという。しかし年
をとるにつれ、つらいと思うことばかりが増えてきた。そんなとき僕は、藤沢周
平の作品を読んで明日への活力を得ることにしている。 

乾  正 知(工学部・システム工学科)

ラベルの記号 913.6:Sem