藤 巻   宏・鵜 飼 保 雄 共著
『世界を変えた作物』(培風舘)☆

 これからは農業である。しかしこれまでも農業であった。この本をお勧めする
理由は食物と人々の心が作る歴史という観点にある。            
 以前私は、飢饉に強いジャガイモの普及のさせかたが国によってずいぶん異な
ったことを何かで読んだ。イギリスでは、王様が率先してジャガイモの栽培を奨
励したがさっぱりだった、しかしフランスではジャガイモを植えた畑を柵で囲い
「王室の御用達ゆえ盗んではならぬ」という立て札を立てた、すると夜陰に乗じ
てジャガイモは次々と盗まれ、あっという間に国中に広まったというお話である。
果たしてこのお話はこの本の中に、もっときちんとした形で書かれていた。しか
も、『共産党宣言』やゴッホの絵「馬鈴薯を食べる人たち」までつながるのであ
る。                                
 著者は13種の作物について科学者らしく淡々と書いているが、読む方で想像を
めぐらせば熱くなる本である。一般教養の書としてすべての学生に是非々々一読
してもらいたい。 

中 島 潤 子(保健管理センタ−)