この新書に、青年期をいかに生きるかというようなことを期待すると裏切られ る。 著者は学園紛争時代に京都大学の保健管理センタ−にいて、ひっそりと留年を くり返す学生に気づき「スチュ−デント・アパシ−」と命名した。その名のとお り、大学生によくみられる心の不調である。慢性の五月病と思っている人もいる が、それはともかく、第三章に日記体で登場する。初めは旧制帝大の男子に特有 の不調と思われたが、その後地方大学にも女子にもみられるようになった。過食 や拒食をみてもわかるように、心の不調は、ひとの年代や性の他に、時代も反映 する。 因みに、「精神病理学」とは心の健康でない人に関する心理学である。欠如態 から、正常態では覆われてみえないものをみるのだと著者は言っている。しっか り精神医学的な内容だが、大学生の年代に焦点を絞ってわかりやすく書かれてあ るから、どれも興味深く読めると思う。第三章だけでも読んでほしい。