池 上 嘉 彦 著
『「する」と「なる」の言語学』(大修館書店)

 英語を学習してきた過程において、日本語との違いをなんとなく感じてきた人
も多いと思います。ただ、この「なんとなく」を人に説明できる形で言葉にして
みるのは、とても難しいことなのです。まして、一つの事例だけにとどまらない
で、いろいろな現象を統一する形で、英語と日本語はこう違うというのは。「す
る」と「なる」というキ−ワ−ドを使うとこれがうまくいくというのが、この本
の主張です。つまり、ある出来事を英語は、動作主の行為という形でとらえるこ
とを好む「する」的な言語、日本語は、事態の推移という形でとらえることを好
む「なる」的な言語だというのです。この結論自体も面白いものですが、この結
論に至るまでの様々な興味深い例示と胸のすくような明晰な論証にこの本の醍醐
味があります。是非、この本の著者の明晰な文章を味わって、言語学の考え方に
ふれていただきたいと思います。

森  雄 一 (人文学部・人文学科)

ラベルの記号 801:Sur