デイヴィッド・スミス 著(西村章次 監訳)
『知られざる声 障害児の歴史に光を灯した女性たち』・湘南出版社

  本書は副題が示す通り、障害児教育に携わった、あるいは自ら障害を持つ歴史
上の女性を何人か描いたものである。                   
 「奇跡の人」で有名なヘレン・ケラ−ももちろん登場するが、ここではむしろ
彼女を支えた二人の人物が興味深く取り上げられている。一人は家庭教師サリバ
ン。名前は良く知られているが、彼女自身も視覚に障害を持ち、救貧施設で全く
教育を受けられないでいた生い立ちや、盲学校で学びながらどの様にその後の教
師としての才能を身に付けていったのか、その記録は感動的である。もう一人は
ベル博士。電話の発明家として有名だが、実は彼は障害児教育について当時にあ
って非常に先駆的な思想の持ち主でもあった。               
 一方で、「精神薄弱」というレッテルを貼られ優性思想の犠牲となった女性も
何人か登場する。英雄的男性中心の歴史になれている我々がつい見過ごしてしま
う近・現代史の一端を垣間見ることができる。

荒 川   智(教育学部・障害児教育講座)

ラベルの記号 378:Smi