本書は、障害児教育につきあいの長い読者にあっても、障害児・者に対する関 心を少しでも持った読者にあっても、様々な読み方が可能であり、読者を選んだ り、読み方を押しつけない配慮を感じる本である。 本書に惹きつけられるもうひとつの魅力は、筆者の築き上げてきた障害児・者 と“かかわる”姿勢そのものが、全章にわたり暗示されていることにある。話の 枠組みも明快であり、「障害」という用語に対する理解にはじまり、障害児・者 と視点を共有することの意味、発達のつまづきやすばらしさ、成長に伴う苦悩に ついて語られ、ライフロングな教育的支援のあり方がありのままに論じられてい る。 まとめには、今日的な普通教育との統合や権利保障の問題が示されている。障 害児教育を通じて、多様な個の発達と存在の肯定という、画一的な価値観からの 解放が読者自身に訴えられてくる。読む度毎に新たな気付きを与えてくれる本書 を一度めくってみて欲しい。