ノバ−ト・ウィナ− 著
『サイバネティックスはいかにして生まれたか』(みすず書房)☆

  「サイバネティックス」とはどのような意味の言葉なのか。著者によれば、そ
の語源はギリシャ語の「キュベルネ−テス:舵を取る」にあるという。「舵を取
る」を現代風に言い換えるならば、「制御する」ということ。したがって「サイ
バネティックス」は「人間と機械に共通する制御の原理を探索する学問」である
と理解できる。                             
 情報革命が進行する現代社会とそこに生きる人間の本質を究明する学問として
情報科学が高い評価を得ている限り、「サイバネティックス」は情報科学の理論
的母胎としてその存在価値を失うことはないだろう。数学者として青年時代から
輝く才能を発揮したウィナ−は、やがて来る21世紀社会を通信と制御の技術が
革命的に発展する時代であり、情報が爆発的に増大し、高い評価をもつ時代であ
ることを予見した科学者であった。                    
 この書物は、数式を使わないで自伝風に著述されたウイナ−の代表作の一つで
ある。

松 井 宗 彦(教育学部・知識経営講座)