本書は著名な心理臨床家である著者が「臨床」の視座から子どもの実相、子ど もと教師の関係、教育の本質などについて考察し、さまざまな問題を抱える現代 の学校教育を問い直すとともに、新しい「臨床教育学」の構築を提言している。 内容は1.「教育の価値を見直す」、2.「大人が子どもにかかわること」、3. 「教える側、教わる側」、4.「こころが育つ環境」の四部から構成されている。 教育の実際について具体例を挙げながら、読みやすい平易な文章で書かれてい るので、気軽に読めるが、書かれている内容を深く理解するには経験と時間がか かると思う。 教員を目指す学生諸君の必読書であると思うが、卒業後に個々の問題意識から 再読しても価値のある本である。 同じ著者の『子どもの宇宙』(岩波新書)や『臨床教育学入門』(岩波書店) も併せて読まれるとよい。