鬼 頭 清 明 著
『古代宮都の日々』(校倉書房)

 平城京や平安京といった古代の都城というとどうしても政治都市というイメ−
ジがつきまとう。しかし、筆者はそこに生きた人々の生活に目を向ける。歴史学
とは制度や空間構造といったハ−ドのみを対象とする学問ではなく、そこに生き
た人々の社会、生き様といったソフトをも考えるべきなのだから(こういう歴史
学を生活史、社会史、といいます)。そこで、筆者は木簡史料を縦横に使ってゆ
く。平城京跡で木簡が大量に発掘されたことは周知の通りである。木簡からは人
々のナマの生活が読みとれる。誰が誰に何のためにお米をいくら支給したか。誰
が誰に何を献上したか。例えば当時の食生活がそこからわかるし(木簡から当時
粕漬けの瓜を食べていた事までわかるんですよ)、長屋王が何人の使用人を抱え
ていたかだいたいわかったりする。こうした新しい歴史学の試みを堪能してくだ
さい。そして、さらなる新しい歴史学の方向を模索してください。

京 楽 真帆子(人文学部・人文学科)

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