本書は1975年から 3年にわたり雑誌『草月』に連載された現代美術の入門案内 としての文章を一冊にまとめたものである。 著者は戦後日本の現代美術の第一線で常に論陣をはり続けている一方、各種国 際展のコミッショナ−をつとめ、斬新な企画展を数多く手がけてきた。また水戸 芸術館の芸術監督としてその創設にも携っている。 内容は20世紀の美術、特に20世紀後半の造形の構造的特徴を13の章だてにより、 会話形式で平易に読み解いたものである。他にヴェネツィア・ビエンナ−レのド キュメントと、後に茨城県里美村でアンブレラ計画を実現させたクリストとの対 話を挿入してある。 現代美術というと、とかく難解なものとして敬遠してしまう一方、現在では最 新のモ−ドとして消費し、内面化されることが無い傾向にもある。まだ今日程の 混迷を深めていない時機に書かれた本書の論考を通して、私達の未来へ向けた美 術表現の可能性を探りたい。