著者の富永氏は日本の代表的な社会科学者であり、外国の大学でも講義をした りしており国際的に知られている人である。社会科学も細分化してきており、社 会科学全体を概観できる人は現在ではほとんどおらず、氏が最後の人になるので はないかと思われる。 本書は社会科学を実証主義と理念主義に分類し、それぞれの分野における流れ が整理されている。実証主義の分野ではコント、ラッセル、ク−ン、パ−ソンズ といった人の名前があげられ、理念主義の分野ではフッサ−ル、シュッツ、アド ルノ、ハバ−マスといった人の名前があげられている。 本書の利用の仕方は、まず全体を軽く読み、そこに出てくる社会科学者の名前 をおぼえ、その著作を読み、その後に本書を再読するといった方法がベストであ ろう。こうした作業だけでもとても 4年間では完了はしない。どのような古典を 読み、それを現在の問題とどう結合することが可能かの視点が与えられる。