本書は1974年に英国で出版された『社会言語学入門』を翌1975年に日本語訳し たものであり、言語と社会の多方面にわたる相関関係の諸相を豊富な実例ととも に系統的に解説したものである。言語というものは、いかなる場面でもすべての 人によって同じように使われる単純な記号体系なのではなく、一つの社会文化的 現象であり、社会構造やその社会の価値体系と密接に結びついている。そして言 語と社会とは種々な仕方で互いに影響を及ぼし合っているのである。 本書の構成は全 7章より成り、言語を社会全般、社会階級、民族、性、場面、 国家、地理の各側面から論じている。実例の多くは英国及び米国における英語の 様々な変種であるが、随所に南欧や北欧、アフリカやアジアの言語状況をも例示 し、言語と社会の関係に関心をもつ読者を飽きさせない社会言語学の入門書であ る。学校英語信仰に毒されている多くの日本人学生には良い解毒剤となろう。