張  競 著
『近代中国と「恋愛」の発見』(岩波書店)

 いま、「恋」をしていますか? 「恋」とはなにか、考えたことはありますか?                                  
 この本は、中国近現代文学のなかで「恋愛」がどう描かれてきたか、というこ
とをたどり、分析したものです。「恋愛」の概念や描写、作品の中での意味が、
時代とともにどう変化していったかが語られます。それを通して、日本や西洋の
文学との相違点、中国近現代文学の本質が明らかにされており、中国近現代文学
の格好の入門書でもあります。                      
 著者は先に『恋の中国文明史』(張競、ちくまライブラリ−)で、中国古典文
学の作品をとりあげて、近代以前の中国人にとっての「恋」の概念の変遷を解き
明かしました。両方読むと「恋/恋愛」というキ−ワ−ドから中国文明史を概観
することになるでしょう。                        
 なお、張競氏の言葉をたくさん借りて(というのも二人は親しいつきあいらし
い)日本文学における「恋」「女」について語っているのが、『恋と女の日本文
学』(丸谷才一、講談社)です。

西 野 由希子(人文学部・人文学科)

ラベルの記号 920.2:Kin