本書の著者は経験豊かな精神科医であり、児童福祉の場で出会ったさまざまな 子どもたちとの臨床経験から、刺激的な洞察力に富む家族論、学校論、現代教育 論を展開している。 内容は書名にあるとおり「家庭のなかの子ども」「学校のなかの子ども」の二 部から構成されている。 著者は家庭から学校へ、そして社会へと歩む子どもたちの心の成長の道筋を 「子どもの心の地図」として鮮やかに描き出している。 とくに不登校の問題については、歴史的、社会文化的な視野から幅広く捉え現 代の公教育が制度的疲労をきたしていることを指摘し、具体的な処方を提案して いる。 内容的にはやや難しいかも知れないが、著者自身の学校体験や小説作品が引用 されているので、親しみを感じながら読めるのではないかと思う。教員を目指す 学生諸君だけでなく、将来子どもの心にかかわる仕事を目指す人にとっても必読 の良書である。