高 橋   淳 著
『楽譜の話』(草思社)☆

  音楽の作品は、即興演奏を別にすれば、通常、楽譜に書かれ、印刷されて伝播
する。                                 
 楽譜印刷術は、1501年イタリア人オッタブィア−ノ・ペトルッチにより考案さ
れたが、現存する最古の音楽出版社はドイツのブライトコップフ・ウント・ヘル
テル社(創立は1714年であるが、音楽出版は息子ヨハンの代で1745年より)であ
る。                                        
  19世紀以降、需要の伸びにより音楽出版社が時代と共に増えてきた。        
 本書では、歴史あるすぐれた音楽出版社を選び、その社の特徴とどのような作
曲家を対象にしているかを記している。また、作曲家の自筆楽譜、筆写楽譜、初
版楽譜、全集版、校訂版、原典版等、作曲家の自筆楽譜から印刷出版に至る経路
を詳述しており、作品によっては隠れた秘話も紹介され興味深い。      
 この種の書物は、小冊子ながら、日本人で初めて書かれたものであり、一読に
値する。

臼 井 英 男(教育学部・音楽教育講座)