中 山  茂 著
『科学技術の戦後史』(岩波新書)

 本書は、戦後日本の科学技術がどのように展開され、そして冷戦後の現在どこ
に行こうとしているのかを、コンパクトにまとめた好著である。       
 内容は、占領政策をへて戦後史の起点となった50年代までの「起」、高度成長
の60年代の「承」、環境問題や石油ショックのために方向転換を強いられた70年
代の「転」、そして日本型モデルを指向した80年代の「結」の構成となっている。
戦後の50年間、日本の科学技術はアメリカをモデルとして、「進歩のイデオロギ
−」を盲信してきた。軍事、宇宙、自動車、半導体に代表されるアメリカ・モデ
ルを相変わらず追いつづけていっていいものかどうか?「競争による進歩」は人
類の本当の目標ないし目的なのだろうか?著者は市民・人類によって評価される、
アセスメントを受ける科学活動、「サ−ビス科学」を提唱している。  
 このような、社会が、市民が、評価者として参加していく科学技術のパラダイ
ムは、多くの支持を得つつある。たとえば、『テクノデモクラシ−宣言』(柳田
博明・山吉恵子 丸善ライブラリ−)も好著である。科学技術を専攻する新入生
に一読をお薦めする。

外 岡 秀 行(工学部・情報工学科)

ラベルの記号 402:Nak