P.ラックス   著
『解析学概論上、下』(現代数学社)☆

  この本は、理系学生向きの微分積分入門書である。数学の本は、入門書といい
ながら、数学的厳密さを求め過ぎ、初学者にとって極めて不親切なことが多い。
厳密な表現が理解できることは重要なことではあるが、何よりもまず定理や公式
の表す感覚的な意味を理解することである。微分積分は数理科学の様々な分野で
基礎的道具として広く使われているが、大抵の微積分書は数学的記述に終始して
おり、他分野との関わりにほとんど説明がない。              
 このような不満をもつ者にとって、本書は極めてタメになる本である。上巻で
は微分積分の定義や基本事項をていねいに説明している。下巻では、上巻の内容
を前提として、確率論、振動、生物や化学反応の数学モデルなどについて、具体
的な応用を意識しながらていねいに説明している。数学的には微分方程式の話が
主要なテ−マになっている。数学が広く諸現象と関わりをもつものだということ
を教えられるだろう。

曽 我 日出夫(教育学部・知識経営講座)