小中学校では、スタ−システムを意識して映画を楽しんでいたのが、監督の名 前で映画を語ることで、何かワンステップ進んだような気がしていたのが高校大 学時代だった。しかし、映画はスタ−や監督の才能だけでは論じきれないことを 本書は教えてくれる。特にハリウッド映画は、何よりも産業であり、ス−パ−マ −ケットの棚に整然と並ぶように、ジャンルごとに並んで観客を待つ商品なのだ った。 「ジャンルなるものが、作家なるものの個人的資質とその統御を越えて、どの ように一本のフィルムの支配的原理たりうるか。作家はみずからの主題とジャン ルの要請とのあいだで、どのような選択をおこなうのか。」 恐怖映画とポルノグラフィ−が共有している特質、「ブレ−ドランナ−」とフ ィルム・ノワ−ルの関係など、一読して目から鱗の落ちる映画論である。