加 藤 幹 郎 著
『映画ジャンル論』(平凡社)

  小中学校では、スタ−システムを意識して映画を楽しんでいたのが、監督の名
前で映画を語ることで、何かワンステップ進んだような気がしていたのが高校大
学時代だった。しかし、映画はスタ−や監督の才能だけでは論じきれないことを
本書は教えてくれる。特にハリウッド映画は、何よりも産業であり、ス−パ−マ
−ケットの棚に整然と並ぶように、ジャンルごとに並んで観客を待つ商品なのだ
った。                                 
 「ジャンルなるものが、作家なるものの個人的資質とその統御を越えて、どの
ように一本のフィルムの支配的原理たりうるか。作家はみずからの主題とジャン
ルの要請とのあいだで、どのような選択をおこなうのか。」         
 恐怖映画とポルノグラフィ−が共有している特質、「ブレ−ドランナ−」とフ
ィルム・ノワ−ルの関係など、一読して目から鱗の落ちる映画論である。

小 泉 晋 弥(教育学部・美術教育講座)

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