本書は、医療経済学の新鋭研究者による医療費と医療技術の優れた分析研究の 成果である。日本の医療費高騰が叫ばれて久しいが、著者は対GNP・GDP比 でみると日本の医療費は先進諸国と比べても低額であることを指摘し、日本の医 療分析に新しい視角を与えている。同時に、アメリカ社会における医療の現実を、 医療費と医療技術の観点から検証している。この中でも、特に重要な点は、アメ リカと日本における医療技術の最も鮮やかな違いは、医療技術の経済的評価につ いての意識差であるといえる。医療技術のいかなる点に着目して診療報酬上の差 異をつけるか、また、それにもとづいてどのような供給体制を整えるかという点 で重要な視点を提示している。やや高度な内容となっているが、ゆっくりと時間 をかければわかりやすい内容となっているので、是非挑戦してほしい。