ピ−タ−・バ−ク 著(森田義之・柴野均 訳)
『イタリア・ルネサンスの文化と社会』(岩波書店)☆

  一時代前なら、ルネサンスを知るにはブルクハルト著『イタリア・ルネサンス
の文化』(現在の中公文庫)を最初に読むことを勧められたが、(むろんこの名
著の輝きは今日でも色褪せていない)、現在では、岩波の「ニュ−・ヒストリ−」
シリ−ズに入っている本書をまず勧めたい。美術史というと、やたら七面倒臭い
イコノロジ−とかあやしげな絵解きものが多いが、そんなものを読む前に社会と
文化・芸術の構造的関係をしっかり理解することが大切だ。            
 本書は、ルネサンス期の美術・音楽・学問を造り出した600人におよぶ芸術家・
著述家を検証し、芸術家の社会的地位、パトロンとの関係、作品の機能、美的趣
味、主題分布などの観点から、この時代の芸術生産の構造をあざやかに浮かび上
がらせる。さらに、当時の世界観や社会構造が分析され、ルネサンスの文化と社
会の歴史的全体像が描き出されている。                
 ピ−タ−・バ−クはイギリスの「新しい歴史学」の最気鋭の学者の一人。『ヨ
−ロッパの民衆文化』『フランス歴史学革命』など邦訳も多い。私自身、1970年
代末のイタリア留学中に、本書の初版を読んで翻訳を思い立ち、すぐれた共訳者
を得て 6年前に実現した。

森 田 義 之(教育学部・美術教育講座)