システム農学会 編
『新たな時代の食料生産システム』(農林統計協会)

 日本の食糧問題を考えるとき、3つの側面に目を向ける必要がある。第1は地球
温暖化に関連してどうなるのか、第2は輸入依存の危険性、第3は近い将来の食
糧不足にどう対処するか、である。そのうち、とくに温暖化抑制のためには化石
燃料エネルギ−消費を段階的に減少してゆく約束を、世界各国の間でとりかわし
ているので、食料の生産者も消費者もどう対処したらよいかを模索している。
1992年のブラジルの地球サミットで「持続可能な発展を」と提唱されたのは、そ
のことを主に意味している。
 本書は「持続可能な発展」に食料生産者としてどう対処すべきか、そのため第
一線の研究者はどのような考え方でどのような研究を現在実施しているか、を紹
介している。輸入依存で、国内の農業土壌で処理(分解、利用)しきれない窒素
量が、年々日本の国土に蓄積しており、日本の河川、湖沼の水質汚染が進んでい
るので、初めの3側面が連動していることも、本書を見るとよく分かる。

大久保 忠 且(理学部・地球生命環境科学科)

ラベルの記号 611.3:Ara